紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
連絡先:kiikankyo@zc.ztv.ne.jp 
ホーム メールマガジン リンク集 サイトマップ 更新情報 研究所


  「害虫防除の常識」    (目次へ)

    3.害虫の発生状況の調査法と予測法

     2) 直接観察する調査法

 ア.害虫を直接見つける

 害虫の調査は、作物にどのような害虫が付いているかを知るだけでなく、どのくらいの数が付いているのか、あるいはその程度を知ることが大切だ。防除を行うかどうかの目安にするためだ。

 作物に寄生する害虫を直接観察する調査法は、比較的目に付きやすい害虫で行うことができる。しかし、土の中にもぐっていたり(ネキリムシ;
カブラヤガタマナヤガなど)、植物の中に入っていたり(オオタバコガなど)、隠れている害虫ではむずかしい。

 また、小さな害虫では、よく注意してみないと見落としてしまう。そこで、水稲では調査板や粘着液を塗った平板を株元にあてがい、もう一方の手で、稲株をたたいて調査板に虫を落として、調査板上で害虫の種類や数を調べることが行われている。「農と自然の研究所」の宇根豊さんは調査板を「虫見板」と名付けて、農家が自分の田んぼに入って調べることが減農薬と経営改善に繋がると推奨している。小さな虫の種類を調べるのに、肉眼では難しいコナジラミ幼虫などでは、拡大率が10倍あるいは20倍のルーペ(虫眼鏡)を用いるとよい。

 イ.害虫の食害痕を観察する

 害虫を直接観察する場合には、害虫の密度がある程度高くないとあちこち探し回らないと見つからないことが多い。この場合に、害虫を直接観察するよりも、害虫の食害痕を見つける方が一般にやさしい。特に、葉を食べる害虫では被害痕を見つけやすい。
ハスモンヨトウの卵塊から孵化した幼虫は集団でダイズの葉を食害するので、葉が白変するので分かる。アブラナ科野菜では、コナガアオムシカブラハバチなどが食害すると、葉に穴が開く。

 しかし、幼虫が果実、つぼみ、花、茎など植物体中に入り込んでしまう害虫では食入痕が小さいので、見つけるのが難しい。
オオタバコガシンクイムシ類カキノヘタムシガなどである。

 アザミウマ類やハダニのように、体サイズが極めて小さい害虫では、最初に食害痕を見つけるとよい。
ミナミキイロアザミウマは、ナス、キュウリなどの葉裏に生息し、葉緑体の入った葉肉細胞を破壊吸汁してしまうので、葉裏が銀色に変化し、その部分に排泄物の黒い点が付いているのが特徴的だ。ナスでは、ミナミキイロアザミウマが幼果のへたの下に潜り込んで、果皮を加害するので、その時の傷がナス果実の生長に従って拡大して、果皮に大きな傷が付く。ミカンキイロアザミウマが、ガーベラなどの花を加害すると、花弁に傷が付き、甚だしいと花弁が小さくなったり奇形になったりする。

 チャノホコリダニ
が加害すると、ナスの新芽の生長が止まってしまう。ハダニが加害すると、葉に点々と小さな白い吸汁痕が生じる。トマトサビダニでは、トマトの幼果が硬くなって変色し大きくならず、また、下葉から次第に枯れ上がる。しかし、サビダニは肉眼では見えないほど小さく、判別しにくい。

 ウ.害虫の排泄物などの生活痕を観察する

 害虫が植物体中に食入してしまい直接見つけにくいトマトなどを加害する
オオタバコガ、トウモロコシを加害するアワノメイガ、ダイズを加害するシロイチモジマダラメイガなどでは、生活痕としての糞や小さな食入痕を観察する。これらの食入害虫については、一部の作物を分解して中にいる幼虫を見つけて確認する方法もある。

 エ.すくい取り、たたき出し、掘り起こし

 害虫が水田や畑の作物の中にいて見つけにくい場合に、捕虫網で一定回数すくい取って、捕れた虫の種類と数を数えることによって、調査対象の害虫の発生状況を把握できる。水稲の
ツマグロヨコバイウンカ類など、すくい取りを行いやすい作物でこの方法を使うことが出来る。

 すくい取りしにくい葉菜類などでは、畑の際を歩きながら、棒で株をそっとたたいて、アブラナ科を加害する
コナガ、ダイズを加害するホソヘリカメムシなどの成虫を飛び立たせ、その数を調べることによって発生状況を知ることができる。

 野菜を地際で切断し被害を及ぼすネキリムシ類(カブラヤガ、タマナヤガ)や、夜間に地上部の葉などを加害するヨトウムシなどは、昼間は株元の土中に潜伏しているので、被害が出た場合には、株元を掘り起こし害虫の有無を確認する。
  
次ページ「トラップによる調査法」へ
前ページ「害虫の発生状況の調査法」へ戻る

「害虫防除の常識」の「目次」へ戻る
「ホーム」へ